うちに来る野良猫の内、メスは3匹。2匹は避妊手術済みで戻し、もう1匹はガリガリなので、餌をやり太って体力がついたら避妊手術をと考えていたサビ猫。
小柄で目つきが鋭く恐い顔をしている。しかし見た目と違い1番懐き、賢く、返事の鳴き声は何とも言えず可愛いらしく愛嬌がある。
道路の向かい側からいつも用心して渡って来るが、毎回ドキドキして心臓がもたない。
動物好きの私はすぐに情がうつってしまう、そして心配性になる。
だが、我が家には3匹の猫がおり色々な事を考えこれ以上は飼わないつもりだ。
余程の理由がない限り保護は出来ない(今は2匹の子猫を保護しているが)
なので野良猫に情がうつり過ぎないように正式な名前は付けない、
構い過ぎない…ように努力している。
サビ猫はカリカリのフードが食べれないので、見かけたら柔らかいフードを与える。そして段々ふっくらしてきて、元気になってきたなと思っていた頃、何日かサビ猫を見かけなくなった。『どうしたんだろう?調子が悪いのか、まさか交通事故にあってないよね?』
不安がよぎる。
夜遅くに仕事から帰って来ると、道路を挟んだ向かい歩道にサビ猫が倒れ亡くなっていた。
身体が震えた。
姿を見せなかったのに、うちに御飯を食べに来ようとしてたのか、頑張って会いに来てくれようとしてたのか…。
車にはねられた形跡は無かったので病気だったのだろう…。
翌日夕方からオンリーワンさんの霊園をお借りしてお見送りをした。
迷う事なくスラスラと私の心の内を手紙に書き、サビ猫の両手に挟んであげた。
最後はうちにの子にしてあげようと、名前は『いなり』と言われた。
実は正式な名前を付けないと言っていた私は、初めてサビ猫に会った時、すぐに名前が自然と浮かんでしまっていたのだ。
それは『日向( ひなた)』
ポカポカと暖かく優しい気持ちにしてくれたからだ。
サビでも、いなりでも、日向でも、この子はうちの子になった。
とても穏やかな顔になっていた。
喉仏はびっくりするほどに綺麗でこの子を表しているようだった。
今はこの言葉しかない。
『本当にありがとう』